Water Mirror
2025
Solo Exhibition
Gallery38/東京・日本
Fate laid me hereRooted in time, memories in bloom
移民にまつわるさまざまな課題が世界各地で顕在化するなか、ドイツもその例外ではなく、人口増加にともなう都市開発により、ジェントリフィケーションが進行しています。その結果として、社会のさまざまな矛盾や衝突が生じています。ドイツに暮らす私自身も、12年間の暮らしの中で日々環境や価値観の変化を肌で感じながら生きる「移民」の一人であり、この世界で生きて行く上でどのような基準で人間は判断されるべきか、という問いを持ち続けています。排除されることもあれば、文化の担い手として期待されることもあります。移民とは一方から見れば「他者」であり、また一方では「自己」です。その土地に根を張りながらも、影響を与え続ける存在として、常に交渉の中にあります。
本二作品では、移民のメタファーとして新しい土地に「新しい野生」として根付いた非在来種の植物を用いています。中でも、特に拡がりが顕著で生態系への影響が懸念されている植物種は、いわゆる「侵略的植物」として知られ、各国でその管理や対応策が講じられています。都市開発の現場では、繁殖力が強く、厳しい環境にも適応するこれらの植物が数多く見られますが、時折、流れ出したコンクリートに覆われ、まるで化石のようになった姿に出会うこともあります。人間の営みや環境の変化に翻弄されながらも、やがてこれらの植物も、他のあらゆる植物と同じように、この大地の一部となっていくのです。
Fate laid me hereは、ドイツにおける外来植物(スモールバルサム、ニセアカシア、セイタカアワダチソウ、イタドリ)、日本における外来植物(セイヨウミヤコグサ、セイヨウタンポポ) など、侵略的と言われるものや観賞に適し有用とされる植物、今では景色の一部となった植物など、二カ国で収集した植物を用いています。移民という概念は、一方的な視点では捉えきれず、受け入れる国と送り出す国の双方のまなざしがあってこそ意味を持つためです。
Rooted in time, memories in bloomでは非在来種の植物として、日本でもよく見かけるムラサキツメクサを作品の中に潜めています。ムラサキツメクサの「ツメクサ」は「詰め草」を意味し、ヨーロッパから日本へ輸入したガラス器具の緩衝材として日本に移入しました。外来の種でありながら、子どもの頃から私たちの身近にあった花として多くの人にとってすでに風景や記憶の中にあり、私たちの心に根付いた存在となっています。そして、別名クローバーであるこの種は、豊かな愛や幸運の象徴として様々な国で愛され、文化や感情、そして地理的な地平においても私たちを越境的に繋ぐ景色でもあります。
これらの作品の背景を想像する手がかりとして、テキストをまとめた冊子を展示会場に置いています。
Rooted in time, memories in bloom
2025
日本におけるドイツを含むヨーロッパからの外来植物(ムラサキツメクサ)、木、真鍮、ガラス、鏡、石、石英砂、テキスト、冊子
H151 × W170× D138cm
Fate laid me here
2025
ドイツにおける外来植物(スモールバルサム、ニセアカシア、セイタカアワダチソウ、イタドリ)
日本における外来植物(セイヨウミヤコグサ、セイヨウタンポポ)、強化石膏、テキスト、冊子
H1.8 × W19 × D32 cm (スモールバルサム)
H21 × W33 × D1 cm (ニセアカシア)
H17 × W13.5 × D1.5 cm (セイタカアワダチソウ)
H15 × W39.5 × D2 cm (セイヨウミヤコグサ)
H28.5 × W32 × D2.5 cm (イタドリ)
H14 × W185 × D1.5 cm (セイヨウタンポポ)
This booklet serves to accompany the interpretation of the works Rooted in time, memories in bloom and Fate laid me here.
Designed by Sam Kim
Images © BGBM Herbarium B, CC BY-SA 3.0. herbarium.bgbm.org/
(e.g., object/B101254822, B100741582, B101083153, B101273117, B101273504, B101172037)
© 2025 Asako Shiroki
The phases of the moon (Drawer)
2025
真鍮鋳造、木
H129× W59 × D10.5 cm
Evergreen
これらの作品は戦後の韓国と日本を逞しく生き抜いた歴史的背景を持つ人々を匿名的に表しており、韓国人の夫を持つ私自身の家族の記憶に根ざしたものでもあります。現地でのインタビューによって、松の木が韓国の人々の心を象徴するものであることを知り、「常に青く、朽ちることを知らない」この松の木をモチーフとした作品です。
Evergreenは、蒸留によって韓国と日本の双方の松から抽出した精油を作品にしています。この精油は、仮説として語られる魂の重さ、21g分の量をガラス瓶(心臓のサイズを象った)に注いでいます。蒸留という物質の変容によって不可視の存在となった香りが空間に浮遊し、また、ガラス瓶を吊るし弛む銀の鎖は、床を伝い日本と韓国を分ける境界線を描きます。
Melting into colorは、韓国と日本の松を混ぜて撮影した二つの写真作品で構成されています。片方は韓国で撮影されたもの、もう一方は日本で撮影されたものです。意図的にピントを合わせずに撮影されたこれらの写真では、色が際立ち、混ざり合ったかのように見えます。これらの作品は、日本に住む韓国人が日本社会に同化していく様を、同時に日本で生まれた人々が韓国社会に同化する様子を映し出しています。
Invisible yet still green (Video)は、蒸留という過程を通じて多様な要素が融合され、凝縮した存在に変容する過程を映像としたものです。物質から液体、そして気体として、視覚では捉えることのできない存在となる香りへの変容は、視覚的な形を超えてより深い意味へと昇華する「彫刻」の本質を捉えています。
蒸留を行うことで、材料に関連する意味や概念を自ら再解釈していきます。生物学、歴史、個人史、地政学などの多様な要素を織り交ぜながら、運命による偶然と必然を介在させた記憶を体現する彫刻としての「香り」です。
以前、私は芸術のアクセシビリティに焦点を当てたレジデンシープログラムに参加し、障害者と隔たりなく、また彼らが能動的にアートを共感し得る作品や場について思考する機会を得ました。これまでの私の作品の形態は彫刻やインスタレーションといった視覚的体験に多くを依存したものでしたが、視覚障害者にとって視覚的な刺激に頼らない「美しさの概念とは何か」という問いを持ち続けていたことが、「香り」を作品として扱うことへと向かわせました。
そしてまた、私自身がコロナウイルスの後遺症として一時的に嗅覚を失った事も、嗅ぐという行為について考えるようになった大きなきっかけです。回復の一環として、脳内の嗅覚記憶を取り戻す為に、毎日異なる香りの精油を嗅ぐことを医師に勧められました。香りは記憶です。つまり、香りを感じるたびに私たちはその度、記憶を再生しているのです。Evergreenはこうした「記憶」を呼び覚まし(recall)、新しい意味を「再生」(re-generate) していく作品です。
世界では現在、難民、紛争、気候変動、想像の及ばないことも含め、様々な問題が起き続けています。日々晒される視覚情報に頼りきらないという選択や手段を作品でも行うことで、他者を想像し、まだ知らぬあなたに少しでも寄り添えることを信じて、霞の向こうに歩を進めていきたいのです。私たちは、物事を主観的に捉えることから逃れることができません。しかし、他者(自然物などを含む)を鏡にして抽象的に捉えることで、客観の高台にたち物事を俯瞰して眺めることができます。
Melting into color
2023
ピグメントプリント
H89.5 × W126× D1.5 cm each
Evergreen
2023
ガラス、21gの精油、シルバーチェーン
サイズ可変
Invisible yet still green (Video)
2024
6min 43sec
Director and Artist: Asako Shiroki
Videographer and Editor: Yoshihiro Inada
A film by Asako Shiroki
Cooperation:
Takuhito Kawashima (kontakt co ltd.)
Epo Labo (Distillation)
First Grade (Glass)
Green Peace (Pine tree)
Your voice, echoed
2022
木、鏡、シルバーチェーン、釉薬
W15.5 × D35 × H100 cm
Brezel
2025
ブロンズ鋳造



















